子供の人格障害に悩む親御さんたちは、子供を救いたいという一心で治療方法や専門病院、支援施設について熱心に調べられています。

しかし、日本国内における人格障害(パーソナリティ障害)の回復支援を専門とした施設は、探してもあまり数がない(選択肢がない)というのが悲しい現実です。

設立当初より人格障害の回復支援を専門に謳い続けてきた当施設は、

「人格障害と診断された子供の受け入れ先が見つからない…。」

と、心の底から助けを求めるご家族や当事者たちの悲痛な叫びをずっと聞き続けてきました。

人格障害を専門に扱ってくれる施設がもっと国内に増えてくれたら…そう願ってばかりいても他力本願で現状を打破できません。

そこで当施設は、よりたくさんの方に施設の存在を認知していただくことで支援の輪を広げていこうと、近年ではブログや広告などの広報面にも一層の力を入れています。

今回からは、数回に分けてブログ上で当施設の理念や魅力などをいくつかご紹介していきますので、少しでも多くの方に興味を持っていただけることを願います。

家族再生

施設を運営していくうえで最も大切にしている理念の一つに、”家族再生”というものがあります。

家族再生とは、障害に苦しむ当事者(子供)はもちろん、これまで必死に支えてきてくださった保護者を含んだ”家族単位での心のケア”を並行して行い、それぞれの関係性をもう一度見直し、その絆を深めていただくというものです。

具体的にどういったことをしていくのかと言うと、時にはお互いの行き違いを認め合ったり、人のことばかりに行っていた目を自分に向けるよう仕向けたり、過干渉な関係を見直したりと、その家族ごとに必要と考えられるケアを行っていきます。

家族の数だけケアの方法が違うとは言っても、”回復までにはとても時間がかかる”という点は共通しています。

理由としては、人格障害と診断されるに至った子供の背景にある成育歴、環境、社会の影響の度合いによって、それを解きほぐすには長い時間が必要となってしまうためです。

まるで複雑に絡み合った糸を解くのに時間がかかってしまうかのように、付き合う方もとても根気を必用とします。

当の本人(子供)はと言うと、おそらくあまり体験したことのないような、”相手の意見をどのように認め”、”受け入れ”、”尊重する”といったことを学んでいくので、こちらも時間がかかってしまうのは仕方ありません。

支える側は、子供たちが自分の考えや意見をはっきり伝えることができるよう工夫を凝らし、冷静に物事に考えを巡らせやすい環境を整備してあげることも忘れてはいけません。

その工夫の一例として、例えば子供が誰かと口論(討論)になってしまったとしましょう。

そんな時は決まって最後に、

「お互いの考え方の行き違いはなんだったのか?」

「お互いの妥協点として、どこに落としどころを見つけようか?」

ということを冷静に、一緒になって考えます。

こうした体験を重ねていくと、人格障害の持つ特性にも負けない社会性のスキル(技術)が身に付きます。

このように、入所生活中は心理士、スタッフ、同期の仲間たちとの体験を通じて、

「相手をどこまで信用できるか?」

「どこまで頼っていいのか?」

といった自問自答を行える場面がたくさん用意されています(環境整備の一環)。

私どもは、人格障害のケアにおいてどんな専門書やネット上の知識よりも、実際に生身の人と相対した経験に勝るものはないと、これまでの臨床研究より確信を得ています。

家族全員がもう一度笑って過ごせるようになるまで、そうした体験を重ねて学んでいっていただくことが家族再生のための重要なプロセスなのです。

安心が人を変える

私たちは日頃、安心を感じると気持ちが軽くなったり、胸がスっとして心地よくなったりするものですが、人格障害を持った方たちは安心を感じることがほとんどありません。

逆に言えば、そうした感覚をたくさん経験させてあげることができたなら、その人が本来持っている健全でバランスの取れた状態の自分を取り戻すことができるという風に考えることができます。

そこで当施設は、子供たちがありのまま(自分本来)の姿で生活できることを目的とした自由参加型セラピーや自己管理ルールなどを定めています。

他の入所施設と大きく方針の異なるこの”自由な生活ルール”には、それぞれ経緯や症状の違う子供たちが集団の中にいながらも自分のペースで生活できるという狙いがあります。

これらについては次回以降で詳しくご紹介させていただきますが、治療困難と言われる人格障害を持った方が抱える様々な悩みや問題を個別に対応するという点で、この手法は理にかなっているのです。

そして、日常的に安心を感じることができるようになる頃には、社会生活を送るうえで支障が出ないレベルにまで回復が期待できることも、過去の臨床研究によりわかっています。

今は不安で怖くても

人格障害を持った方たちは自分が施設へ入所することになると聞くと、

「自分は馴染めるはずがない…」

「家から出て生活なんて無理だ…」

といった不安と怖さで頭がいっぱいになってしまうようなことも少なくありません。

実際に、施設へ入所されてから始めの1~2ヶ月は部屋にこもりっきりなんて方もいらっしゃいます。

しかし、それでも時間が経てば自然と環境に馴染み、3ヵ月もする頃には徐々に食堂や庭などの共同スペースへと顔を出してくれるようになります。

子供は親が思っているほど弱くも、かわいそうでもなく、強さとたくましさを持っているものなのです。

最初の引きこもり時期に、親へ向けて「助けて」「ここから抜け出したい」といったメッセージを発信する子供も多くいらっしゃいますが、ここで本当の意味での子離れ、親離れが試されていると思ってもらってかまいません。

親がそんな子供の心理状態を正しく把握しきれず、

「今の子供に必要なものは本当に親の助けなのだろうか?」

と、自問自答することもあるでしょう。

そんな時は独りで考え込まずに心理士と相談し、子供が何を考えていて、自分(親)はどうすべきかということを一緒に考えてみると良いかもしれません。

当施設は、こういった親御さんへの心理支援も重要なことであると認識し、子供の社会自立と同じくらい大切に考えています。

何度も挫けそうになったり、逃げたくなったり、諦めたくなったりしても、その気持ちを抱え込まずに私ども支援者とどんどん共有していってください。

そうすることで、心折れずに全員が一丸となって前向きに取り組む姿勢が子供たちの目に映り、”安心”や”信頼”といった感情を抱くようになり、真の意味で自立へと歩を進めていかれるのです。

望まれる家族の未来の姿に向け、ぜひ私ども支援者と共に歩む道を検討してみてください。